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2006年11月25日 (土曜日)

バルビローリ/蝶々夫人


プッチーニ:「蝶々夫人」全曲
レナータ・スコット(蝶々さん)、カルロ・ベルゴンツィ(ピンカートン)、ローランド・パネライ(シャープレス)、アンナ・ディ・スタジオ(スズキ)、ピエロ・デ・パルマ(ゴロー)他、バルビローリ指揮 ローマ歌劇場管弦楽団&合唱団

いまさら蝶々夫人なんて。

いやそんなこといわないで。あの、バルビローリだから食いついて。

おねがい。

バルビローリはイギリス生まれだけど、おとうさんはイタリア人(おとうさんもおじいさんもヴァイオリン弾き)。だから、半分はイタリア人。ジョヴァンニ・バティスタって幼少の名前もある。イタリア料理も得意である。(関係ないが)

だから、イタリア・オペラは彼には近いものだと思う。

バルビローリ協会から出ているGlorious Johnという2枚組CDには、彼の指揮したかなり若いころのイタリア・オペラのアリアを指揮したものが聴ける。カヴァレリア・ルスティカーナ、オテロ、トスカ。

中でも「トスカ」(1929年)のスカルピアの「行け、トスカ」を伴奏したものは、ダットン社の復刻技術が素晴らしく、すごくかっこいい。

バルビローリは、マリア・カラスとの「アイーダ」のライブ録音も残している。テスタメント社から出ている。これは残念ながら未聴。

銀座HMVで安売りをしていて1枚だけあったので目星をつけておいたら知らないおじさんに取られてしまった。おじさんが手を離すのをじっと待っていたが、買われてしまった。それ以来買おうと思ってない。きっかけって大事。

「蝶々夫人」の録音は1966年。有名なベルリンフィルとのマーラーの9番の2年後ということである。

ということで早速蝶々さんのCDを聴いてみる。CDをかけてみてすぐサー・ジョンの演奏だってわかるよ。なんでかっていうとすごーく唸るから。ほとんど全曲に渡って唸ってる。

私の持っているもう一つの「蝶々夫人」はシノポリ指揮。だからこれとしか比較はできないんだけど(許して)。シノポリもかなり唸る指揮者だけど、サー・ジョンの比ではない。

ま、肝心の演奏ですが。
今まで聴いていたのがシノポリで、シノポリのは「エレクトラ」か「サロメ」かと思うくらい冒頭から気性が激しい。おいおい、プッチーニだよ。
(他のチョウチョウサンは実演でしか聴いたことないから、こんなもんかと思っていたが)

バルビローリのはそんな激しいことはない。15歳(って設定はムリがある)のヒロインをいたわるようにやさしく、ときに強くサポート。

とくにバルビっぽいと思えるのは、比較的スローなで穏やかな音楽のとき。蝶々さんが女声合唱とともに登場するときのオケは本当に心の底から歌っている。そしてサー・ジョンは唸っている。

夢の中のスローモーションのようである。

激しいところより、「さあ、オケが歌うぞ」という場面でよく唸る。

ボンゾーが登場するようなオケが激しくなるところではそんなでもない。サー・ジョンはボンゾーには興味がないと見える。(聞えないだけかもしれぬが)

最後の有名な二重唱の、最後の直前に伴奏がやや静かになり、蝶々さんが一般よりややささやき加減で歌うところもすごーく綺麗。声がオケと一体化してる。遅めのテンポも素晴らしい。

歌手だけれど、今更ながらレナータ・スコットは本当にうまい。声色を色々使い分けて15歳の少女だったり、大人の女だったり、母だったり。

ピンカートンのカルロ・ベルゴンツィも、「悪役」に徹していてうまい。シャープレスとの会話と蝶々さんとの会話の違いが声でよくわかる。ホント悪い奴だと思える。

(シノポリ盤のカレーラスのピンカートンはそれに比べて全然悪そうでなく、終始アンドレア・シェニエみたいな正義の人に聞えてしまう)

このCDの一番聴き所として「ハミング・コーラス」のあとのオーケストラの間奏。ここが聴きたくて買ったようなもの。蝶々さんがピンカートンを待ちわびる心情が描かれる。ワーグナーで言えば「トリスタン」の第3幕の出だしのようである(いや、あんなに荒涼とした音楽ではないんだけど)。ここではやはりバルビローリ。歌う歌う。

そのあと、小鳥が鳴いて朝になる場面は、まるでマーラーの交響曲のようである。(これはどの演奏でも思うんだけど。プッチーニとマーラーは似ていると思う)

ということだが、途中まで「バルビローリの蝶々夫人」としてオケ部分を懸命に聴いていたのにもかかわらず、ピンカートンが帰ってくる大砲の音のあたりからすっかり蝶々夫人ペースに巻き込まれ、すっかりオケのことなど忘れ、いつもの通り涙に暮れるというパターン。いやー、ホントにプッチーニは天才。


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コメント

こんばんは。蝶々さんは、「いまさら」なんてオペラじゃありませんよう。魅惑的な音楽じゃありませんか。
実は私も「バルビローリ」と「シノーポリ」の2種のみを持ってます。フレーニとスコット、どちらも好き。カレーラスとベルゴンツィ、ベルゴンツィの方がいい加減さが出ていて好き。シノーポリとバルビローリ、どちらも好き。てな訳で、両方愛聴してます。
ハミングコーラスは、間違いなくバルビローリに軍配、naopingさんのおっやる通り。シノーポリは押さえすぎで、囁くよう。
バルビローリの「オテロ」も面白そうなので、いかがですか?

投稿: yokochan | 2006年11月26日 (日曜日) 23時26分

>>yokochanさん
コメントありがとうございます。そうそう、シノポリとバルビローリってレパートリーは結構重なる所多いと思うんですけど、まるで音楽的に違うので比べると面白いですね。フレーニとスコットは双璧で私もどっちも好きです。でもスコットの芸達者さにはちょっとまいってしまいます。
バルビローリの「オテロ」、前に中古レコードで見かけたような・・・今回タワレコとHMVのサイトで探したら見つけられませんでした。見つけたら是非聴いてみたいと思います。

投稿: naoping | 2006年11月27日 (月曜日) 00時06分

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