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2006年10月 3日 (火曜日)

ベルク「ルル」その2

Luludvd昨日の続き)


満を持して、24歳になるまで彼との再会を待っていた私。
しかし、24歳になったといっても、私は精神的にはさっぱり中学生と変わっていなかった。ガキだった。

でも、CDを買ってしまえばこのオペラは私のもの。

シェーン博士は私のもの。

本や解説によく書いてあるように。
この「ルル」というオペラは、作曲者ベルクが死ぬまで10年間も続けたハンナ・フックス=ロベッティンとの不倫の恋愛より多大な影響を受けている。

Hanna ハンナはアルマ・マーラー=ウェルフェルの3番目の夫、フランツ・ウェルフェルの姉である。写真のように大変美しい人である。これじゃヘレーネ・ベルクも勝ち目なし、といったところか(←?)。

ま、そんな感じで。大人の恋愛の機微を当時24歳のアホな私が解するわけもない。しかし、音楽の美しさには相当まいってしまった。CD買って初めて長い全曲を聴いてみたのだが、もう全ての瞬間が美しいと思える。今まで聴かなかったのがホントばかみたい。

その中でもとくに。(いまだに)私を「よよ」と泣かせる瞬間がある。

それは第1幕第2場、実質的には愛人のルルをさしおいて若い身分の良い女性と婚約したシェーン博士がルルに対して「あなたの主人のいるところでなら逢ってもいい」という言葉に対し、

「あなたの主人の・・・」
私がもしこの世の中で誰かのものであるとしたら、あなたのものですわ。もしあなたがいなかったら、・・・私どこにいるか言いたくないわ。
あなたがあなたの時計を盗もうとしたとき、あなたは私をひきとってくださり、私にたべものをくださり、着る物をくださったのよ。・・・このことを忘れられると思って?あなた以外の誰がいったいこの世の中で残された人でしょう?

と、ルルは歌でなくセリフで切々と語る。そのときの音楽もまた、美しく切ない。
あたしが実年クラスのおっさんで、年若い愛人がいてこんなこと言われたらもうたまらないだろう。(どんなシチュエーションでも私には絶対こんなことはないが)

ここはCDで聴いてもDVDで見ても大抵泣く。

他にグッとくる瞬間は沢山ある。もうここに書ききれないくらい。
ルルが、シェーン博士に婚約者への別れの手紙を書かせる場面。便箋を引っ張り出して「書いてちょうだい」と迫る迫る。もう気持ちいいくらいかっこいい。いまならメールで、というところか。

それと、重要なのは舞台転換のときに演奏される「映画音楽」。第2幕でシェーン博士がルルに撃ち殺されたあと、警察がどかどかと入ってきて、舞台は暗転、舞台にはスクリーンが下りてくる。そしてこれからのルルの運命、投獄されたり裁判になったり、レズビアンのゲシュビッツ伯爵令嬢の機転によって救出されるところまでが無声映画で描かれる(ことになっている。ブーレーズ盤のDVDには入ってない。)

ここはもう、音楽の作り方といい、ベルクの設定どおりに音楽とシンクロさせてうまく作ってある映画(本当に設定通りに作ったら制作費が倍かかりそうだが)とあわせて見るときの感動と興奮ったら他のオペラとは比べ物にならないほど凄い。

以前、アンドリュー・ディヴィス指揮&クリスティアーネ・シェーファーのルルの映像をBSで見たのだけれど、かなり克明に映画が作られていて、これは唸った。(ちょっと笑えるとこもあったけれど)

ベルクがもしもっと遅く生まれていてもっと長生きしてたらきっと映画監督になっていたと思う。惜しい

さて、最初に掲げたブーレーズ指揮の初演のDVD。

映像は一度「東京の夏音楽祭」で映画館で見たときは「ああ、これがずっと待ち望んでいた映像なのね!!」と大層感動したもんだった。

しかし。DVDでいざ見てみると、音楽的にも歌唱も演出もすばらしいが、でも・・・なんだろう。視覚的に華がない。美貌の歌手だったはずのストラータスはもうちょっと若やいでいてほしい。おっさんのシェーン博士はまだしも。シェーン博士の息子や「若くて元気だからルルにあてがわれた」画家だったもうちょっと若くあってほしい(ロバート・ティアーはいかにもキツイ)。「天下の名演」に対して非常にないものねだりで申し訳ないが。

ストラータスは「ええ?こんなかっこで歌えるの?」というくらいアクロバティック。殺されたあとのエビゾリもイナバウアー真っ青の凄さである。

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さて、(まだ終わらないよ。私の「ルル」への愛情はまだまだ続く)次回は初めて見た生ルルについて書かせて頂く予定です。

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コメント

ルルへの思いがひしひしと伝わる記事に感動した!
私もテレビでグライドボーンの上演を観ましたが、面白かったです。でも退廃感が足りなかった。
ブーレーズの映像は未視聴ですが、ティアーはキツイですね。
観たわけではありませんが、1970年の「ベルリン・ドイツ・オペラ」の上演写真を「ルル」を聴きときに見てます。
なかなかのものですよ。今度ご紹介します。
その3も楽しみにしてます。

投稿: yokochan | 2006年10月 4日 (水曜日) 00時08分

>>yokochanさん
感動していただいて大変嬉しいです。
「ルル」に関しては、どうも書くことがたくさんありすぎてほんと思い入れ激しいです。
グラインドボーンのは、シェーン博士が携帯電話で喋ってたり、何だか普通に現代っぽかったですね、シェーファーも良かったけど、彼女も意外と太めなんだなあと感じました。演奏も難しいですが、外見的にもなかなか難しいオペラです。

投稿: naoping | 2006年10月 4日 (水曜日) 21時01分

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