« R・シュトラウス「平和の日」 | トップページ | ドイツ・オペラ・アリア集/ルアナ・デヴォル »

2006年10月18日 (水曜日)

ウルマン「アトランティスの皇帝」

Ullmann1 ヴィクトル・ウルマン(1898~1944):歌劇「アトランティスの皇帝」
ミヒャエル・クラウス(皇帝オーヴァーオール)、フランツ・マツーラ(ラウドスピーカー)、マルティン・ペッツォルト(一人の兵士)、クリスティアーネ・エルツェ(ブービーコプフ)、ワルター・ベリー(死神)、ヘルベルト・リッペルト(ハルレキン)、イリス・フェルミリオン(鼓手)
ローター・ツァグロセーク指揮/ライプツィヒ・ゲヴァンドハウス管弦楽団(1993年2月録音)

本日取り上げますこの作曲家、ヴィクトル・ウルマンという作曲家は、ご存知の方は非常に少ないと思います。以前、ロンドン・レーベルで以前沢山出ていた「退廃音楽シリーズ」の中でも、悲惨な人生を送った作曲家ナンバー・ワンだと思います。

ナチスに迫害された作曲家でも、コルンゴルトやシェーンベルクなどのハリウッドに亡命した比較的運のよい人はいる。

しかし。ウルマンはアウシュビッツ送りにされ殺されてしまいました。それだけでなく、彼の作曲した音楽も抹殺されてしまっていました。

Ullmann2 ヴィクトル・ウルマンの主な生涯
・1898年 オーストリア領テッシェンに生まれる。

・ウィーンで教育を受ける。その後プラハのドイツ語の劇場で稽古ピアノ伴奏者を勤めたり、オペラ劇場の指揮者や舞台音楽の責任者になったりした。

・1929年、ジュネーヴ音楽祭でピアノ曲「シェーンベルク変奏曲」で初めて国際的な成功を収めた。

・・・・

・その後、作曲家として賞を取ったりして認められながらも、ナチスによりテレージエンシュタット収容所に送られる(1942年)。テレージエンシュタットでは普通の囚人作業から開放され、作曲を行っていた。

・1943年オペラ「アトランティスの皇帝」を完成。上演される計画もありながら、理由は不明だが中止になってしまう。・1944年10月16日にアウシュビッツに移送され、彼は殺される。彼のオペラの原稿は友人に渡しており、友人は無事だったため、原稿は残った。


---------

無数の変更が彼の手で書き込まれているので、どれが最初のヴァージョンであるかはっきりしない。オペラのフィナーレもこのCDでは2通り収録されている。

あらすじも、なんだか取りとめがなくてここにまとめようがないが、登場する皇帝オーヴァーオールはアドルフ・ヒトラーをモデルにしたと思われる(途中、本当のヒトラーの演説の録音がちらっと入る)。

全体に音楽はジャズの要素が強いけれど、やはり死の影があまりに強い。ノー天気に酒でも飲みながら楽しく、などとはとてもいかない。襟を正し正座して覚悟を決めて聞くべきである。

作曲家の、死を感じながらもかすかな、本当にかすかな生への希望を感じる部分がある。歌詞をここに載せてみる。



本当かい、榴弾の穴で荒れ果てていない土地があるっていうのは?

本当かい、まだ厳しく残酷というのではない言葉があるっていうのは?

本当かい、まだ百花繚乱の香しい草原があるっていうのは?

本当かい、まだ青々として澄んだ空気の山々があるっていうのは?




このCDでの歌手は、新旧取り混ぜてのキャスティングだが、どの人も真摯な歌唱で素晴らしい。名歌手ベリーとマツーラは勿論、当時新人と思われる若手の歌手の人たちも美声を聴かせる(とくにエルツェの清澄な歌唱とフェルミリオンの深い声が心に残る)。
余白に収められている歌曲集も心に深く染みる。

---------------

今日は秋らしくちょっとマジメに。
人気blogランキングへ

|

« R・シュトラウス「平和の日」 | トップページ | ドイツ・オペラ・アリア集/ルアナ・デヴォル »

コメント

連続コメントお許しあれ。数日来エラー表示でしたよ。
ココログには、頭に来ることばかり。今年の6月頃は最悪でした。悪いなりの情報開示がまったくないのでした。

デッカの退廃シリーズは、よかったですね。でもご紹介の「ウルマン」は全く聴いたことありません。
なかなかに重そうな雰囲気です。世紀末風の作風なんですか?

投稿: yokochan | 2006年10月20日 (金曜日) 01時36分

>>yokochanさん
ココログはじめてからこんなことははじめてだったのでちょっと頭きましたが・・・このところ毎日更新はすっかり諦めていたのでかえってサボれてよかったです・・・。

すごーい昔、ドキュメンタリー番組で、やっぱりアウシュビッツで殺された作曲家(ギデオン・クラインだったかな?)のことを取材した番組をテレビで見ました。
大野和士さんが作曲家の自筆楽譜を見ながら絶句していたのをよく覚えています。

ウルマンは、世紀末風ってより当時流行りはじめだったジャズが入ってますね。無調でもないので、すごく聴きやすいです。が、ジャズっぽいのに全然陽気でなくて重~いです。

投稿: naoping | 2006年10月20日 (金曜日) 21時22分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/108585/3868522

この記事へのトラックバック一覧です: ウルマン「アトランティスの皇帝」:

« R・シュトラウス「平和の日」 | トップページ | ドイツ・オペラ・アリア集/ルアナ・デヴォル »