ハイティンク/リングinロンドン「ワルキューレ」
予告いたしましたとおり、1998年ロンドン渡航の際に見聞きいたしました、ハイティンク指揮の「ニーベルングの指環」の感想を(多少色々思い出しながら)綴っていこうというこの企画。
まずは、こんな素晴らしい公演を観ることにあいなりましたイキサツをお話いたしましょう。
私がとある会社を辞めた日の翌日、「さて、これからどうしようかな」と思っていた矢先、ロンドンに住む友人から突然国際電話が。ちょうど失業中とのことを告げると、「じゃあ、遊びにきちゃいなよ!」と横浜や静岡へでも泊りに行くようなノリで誘われた。で、即決。すぐに渋谷のキンツリへ飛行機の予約。
そしてロンドンにいくからにゃ、ロイヤル・オペラのスケジュールをネットで調べなきゃ。すると。
コヴェントガーデンのオペラ・ハウスが工事中だとよ!!!
ショックは隠せない。しかし。もっとビックリなこと。それは、
あの!ハイティンクがロイヤル・アルバート・ホ-ルでリング全曲を演奏会形式でやるとよ!!!
スケジュールをみると、滞在期間中に全曲見れるっぽい。ので、すかざず友人に券を予約できるかどうかメールを入れると。
「券はロンドンにきてからでもぜんぜん大丈夫よ!一緒に券を買いにいきましょ!」
ということだったので、(ホント、いつも申し訳ないm(__)m。現地係員みたいな扱いである。)現地までぶっとんだ翌日アルバート・ホールのチケットオフィスにて券を買いに行った。
(しかし、どう考えても1日目の「ラインの黄金」は体がムリなので「ワルキューレ」から三日間だけのチケットを購入しました)
←建物すげえかっこいいよ。開演前にぐるぐる回ってしまった。
1998年9月29日
舞台祝典祭典劇 第一夜
楽劇「ワルキューレ」全曲
ロイヤル・アルバート・ホール
<配役>
キム・ベグリー(ジークムント)
リタ・クリス(ジークリンデ)
マティアス・ヘレ(フンディング)
ジョン・トムリンソン(ヴォータン)
ヒルデガルト・ベーレンス(ブリュンヒルデ)
ミシェル・デ・ヤング(フリッカ)
その他
ベルナルト・ハイティンク指揮 ロイヤル・オペラ管弦楽団
開演前、隣の席のご婦人(非常に気品のある50代くらいの女性)に話しかけられた。(勿論英語)
ご婦人「どこからいらしたの?」
私「日本からきました。昨日のラインゴールドは観てなくて、今日からなんです。昨日のはどうでした?」
ご婦人「日本から!私はオックスフォードからきたのよ。・・・昨日の演奏はとってもとってもファンタスティックだったわ。とくに指揮者が。」
私「私はベーレンスが大好きなんです。」
ご婦人「(急に表情を変え)そう、でも彼女はドイツ人ね、とってもとってもドイツ人だわ。・・・私はキャサリン・ウィン=ロジャースが好きなの(←前日エルダとして登場)」
(やっぱり・・・イギリス人じゃ。)
すると、旦那さんらしき人登場。
ご婦人「ねえねえ、聞いて聞いて!この子日本から来たのよ!」
旦那「ほんとに?それは凄い!」
以上、NHK初級英会話。さあさあなたもリッスン、アンド・リピート!!
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今回はオペラ上演ではなく「セミ・パフォーマンス付き演奏会形式」であった。衣装は思い思いのものだし、装置もなし。小道具のみ。オケと指揮者も舞台にのっていて、歌手はその前で指揮者のうつっているテレビモニターを見ながら演技もし、歌う。だから、オケの音はとってもよく聞こえるし、オペラというより歌付き交響曲を聴いているようなかんじ。ま、この日は大人のチャンバラを見ているみたいで楽しかったな。
本日はベーレンスが出演するというので、思わず期待も高まるというものです。また、トムリンソンもすっかりベテランで嬉しい限り。しかし、この二人は(他の歌手が「私、普通の歌手なんだけどたまたまこの役歌ってんのよね」といった感じなのに対し)出てきて最初っから「実は、私たち神々なんです。」って感じで登場する。
ベーレンスなど、盾やら槍やら携えて飛行機に乗ろうとして空港でブザー鳴っちゃって、「私は神の娘たる、ブリュンヒルデなのよ」とか言ってそのまま乗り込んじゃってロンドン来ちゃったみたいな、そんな感じがした。
ベーレンスは他の歌手に比べてちっちゃいし、細い。声だってワグネリアンソプラノとは思えないほど線が細い。なのに、声量は一番あるので不思議。演技もブリュンヒルデそのままって感じ。
しかし。ジークムントはハゲてるし、ジークリンデはなんだかやるきなさそーだし、(マティアス・ヘレは素晴らしかったけど)他の歌手はいまいち。
でも、ハイティンクの指揮は凄かったね~。終幕は大変もりあがり(おいおい、スタジオ録音とのこの違いはなんだい!)、対訳と首っ引きで観ていたロンドンっ子たちはみな感激していた。泣いている人もたくさんいた。
この日は(プロムスでみられる)会場中央の座席はとっぱらっていて、みなクッション持参で座って鑑賞。中央の人たちは当日並んで席を取った貧乏席らしく、若者やハードないでたちのおやじが多かった。
しかし、私は時差ぼけに苦しんだ。眠りこけたりはしなかったが、なんとなくぼ~っとしていた。
もったいなーい!!
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次回、抱腹絶倒?の「ジークフリート」をお楽しみに!
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コメント
速攻コメントなり。
いいないいな、世間ではダメ指揮者と呼ばれ続けた「ハイテンク」が私は好きです。その彼のリングが聴けちゃったなんて。
<ロンドンっ子たちはみな感激していた。泣いている人もたくさんいた> うは~、こんな事想像するだけで涙ぐんでしまいます。
CDのリングは、ムラがありすぎますからね。
ロイヤル・オペラは自主制作CDを始めたので期待しましょう。
マイスタージンガーがいずれ出るみたいですよ。
投稿: yokochan | 2006年9月27日 (水曜日) 00時00分
>>yokochanさん
コメントありがとうございます。実は、blogなりHPなりやりたいなあと思ったのは、このハイティンクのリングのことを書きたかったためで・・・。なんだかあまり面白くない(すいません)演奏という印象だったハイティンクが、実演ではこんな熱い演奏をしていて、英国ではこんなに尊敬されているんです!ってことをお伝えできればいいなあ~なんて思った次第です。
ロイヤル・オペラのオケは弦の素晴らしさにおどろきました。
投稿: naoping | 2006年9月27日 (水曜日) 00時19分