シュレーカー・烙印を押された人々
フランツ・シュレーカー:歌劇「烙印を押された人々」
アルフレート・ムーフ(アドルノ) モンテ・ペダーソン(タマーレ) エリザベス・コネル(カルロッタ)ハインツ・クルーゼ(アルヴィアーノ)その他
ローター・ツァグロセーク指揮・ベルリン・ドイツ交響楽団 ベルリン放送合唱団
(LONDON POCL-1564/6)国内盤
(HMVのHPを見ていたら、どうもこのオペラのケント・ナガノ指揮・レーンホフ演出のDVDが発売されているようである。夢のようなことである。シュレーカーのオペラが映像で見れるとは!)
一時期国内盤で山のように出ていた「退廃音楽シリーズ」の中の一組です。私のような珍しいオペラ好きにはたまらないシリーズでありました(しかし買ってみてダメな作曲家のもあったにはあった)。
シュレーカーはこのシリーズの中ではコルンゴルト(あるいはツェムリンスキー)と並んで知られている方の作曲家に入ると思います。しかし、コルンゴルトとは生い立ちが徹底的に違います。お金持ちの家に生まれ蝶よ花よと大事に育てられ、いかにもボンボンらしい太めのコルンゴルトに対して、スリムで長身そうなシュレーカーの生い立ちはかなりエキセントリックです。
アルマ・マーラー=ウェルフェル著「我が愛の遍歴」より(筑摩書房)
「・・・空想ばかりを追うユダヤ人、彼(F・シュレーカー)の父はある旧家の若くて美しい男爵夫人を誘惑し、金も持たずに国々を逃げ回ったが、運が尽きてとうとうモナコに閉じこもることになった。そこでフランツが生まれた。その後、もう一人娘が生まれた。彼はすなおに写真家になった。あまりの借金の途方にくれてしまったとき、妻や子供たちがいた近くのヴェランダで、彼はピストル自殺をとげたのだった。少年フランツは、ぞっとするような死者となった父の傍に立って仰天してしまったのだった。その後 妹は彼の腕に抱かれて餓死したのである。」
その後、音楽の才能によって母親を養いながら暮らしていましたが、その頃またもや恐ろしい体験をシュレーカーはしています。家の小さな庭に庭師が自分の妻を追いかけて入ってきて、なんと妻を銃で撃ち殺してしまったのだそうです。突然そんなものを見てしまってシュレーカーは腰を抜かしてしまいました。
そんな度重なる死の体験は彼の音楽にも少なからず影響を与えているのかも。
さて、本日のお題のオペラ「烙印を押された人々」の内容。
主なあらすじは・・・
ジェノヴァのお金持ちの貴族アルヴィアーノは私財をなげうって美の理想郷「エリジウム」(ネバーランドのようなものか??)を建設するが、自分があまりに醜い(整形しすぎたのではなく、生まれつき)ため、そこには自らは近づくことはなかった。彼の友人の貴族たちはそれを利用してエリジウムの地下に美女を連れ込んだりやりたいほうだい。
しかし、アルヴィアーノはこのエリジウムをジェノヴァ市に寄付することにした。友人たちは「こりゃヤバイ」とばかり悪だくみを・・・といった内容です。
このオペラの前奏曲は、のちに拡大されてオーケストラの独立した音楽「あるドラマへの前奏曲」となりました。ピアノやハープ、チェレスタによるモザイクのような音楽で始まるこの曲は、それだけでも大変聞き応えがあります。
オペラ本体の中で私が一番印象に残るのは第3幕のエリジウムでのお祭りのシーン。
色々な人物が幻想的な音楽の中で断片的に歌ったり、親子連れの他愛のない会話や、若者が少女をナンパしたりする中、その音楽の波がどんどん熱狂的に盛り上がって行く様は圧巻。ついついそこばかり何回も聴きたくなります。
それにしても、ケント・ナガノのDVDは楽しみ。早く入手して感想を書きたいと思います。
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ちょっと、ちょっと押して戴くだけでいいの。
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コメント
はじめまして。
heut oder morgenと申します。
こちらの幅広い内容に、驚いております。
私のブログで、烙印を押された人々を取り上げたもので、
こちらのURLを貼らせていただきました。
もし何か不都合などございましたら、削除いたしますので、お申し付けいただければ幸いです。
投稿: heut oder morgen | 2007年9月30日 (日曜日) 21時14分
>>heut oder morgenさん
はじめまして! この記事のリンクの報告をありがとうございます。そうそう、この曲のDVDをいまだに見ていないのですが、いつのまにやら日本語対訳盤が出ていたんですね。
「ルル」の記事も期待しておりますので、UPされた際はぜひお知らせくださいね。
投稿: naoping | 2007年9月30日 (日曜日) 23時05分
今頃過去記事コメント失礼します。
いいなぁ国内盤。
ローエングリンでおっかないオルトルートを歌ってるコネルがカルロッタ役なんですね!
退廃シリーズが発売されていた頃は、子供が生まれたりして、音楽から遠ざかっていた時期でして、今にして思えば国内盤でよく出したものだと思います。
KナガノのDVDを是非みたいですね。
他のDVDの余白に3幕の祭りの場面で、カルロッタが夢想的に歌う場面が収録されていて、それこそ夢中で観てます。
少しエロいですが抽象的で、やや読み変えが入ってます。
実演でも観たいけそ、クラシック不況下では無理かもしれませんねぇ。
投稿: yokochan | 2010年3月 7日 (日曜日) 14時23分
>>yokochanさん
こんにちは。
考えてみると、「コネル様の絶頂期」=「yokochanさんが一番お金が要り用だった時期」=「私が一番オペラにお金を使ってた時期」だったのかもしれませんね。バイロイト引っ越し公演も含めて。
ケント・ナガノのDVDは私は結局買いませんで(爆)。YouTubeに映像があって観たんですけど、主役の男の歌手のメイク&衣裳が作家のシモダカゲキさんに似ていたのでどうも気が進まなくて買うのやめてしまいました・・・。
http://www.youtube.com/watch?v=_IMU4rfCUtE
(1:57あたりから登場)
投稿: naoping | 2010年3月 7日 (日曜日) 21時29分