バルビローリ&フェリアーの愛と海の詩
ショーソン:歌曲集「愛と海の詩」 サー・ジョン・バルビローリ指揮/ハレ管弦楽団/ブラームス:歌曲集「四つの厳粛なる歌」 サー・マルコム・サージェント指揮/BBC交響楽団/他、バッハ宗教アリア集/以上カスリーン・フェリアー(コントラルト)/レコード(LONDON L28C-1882)
カスリーン・フェリアーは幼い頃から大好きな歌手の一人である。マーラーの交響曲を一通り聴き進めていくうち、ほとんどの人が必ず通る道である名盤、ワルターとの「大地の歌」、「亡き児を偲ぶ歌」などに出会い、だんだんと彼女の魅力に惹かれていった。
彼女を好きになったことで、それまで全く聴かなかったシューマンやブラームスの歌曲、そして全く馴染みのない英国歌曲まで聴くようになったのである。ラ、ラッブラって何? 人間?とか思いながら聴いていた
そんなフェリアー・ファンのはしくれであった高校生の私。ある日「レコード芸術」の広告にフェリアーの新発見録音!との見出しがあり。しかもなんとあのバルビローリとの共演である。
キャー、うそー!まじー!?買わなきゃー
趣味はシブイがノリだけは女子高生である
発売日を待ち遠しく、指折り数えながら待っていた。←青春真っ只中、他に楽しみなかったのかよ
そして発売日がついにきた。高校の近くの駅前のレコード屋に、買うぞ!買うわよ!と意気込んで買いに行った。
しかし、ない。
おかしいなあ、と思い店員のお兄さんに訊いてみる。すると
「フェリアーとバルビローリぃ?そんなのあるのー?何かのカン違いじゃないー?まあ、女の子の言うことだからね」
・・・・
はい?何て申されました?私、客だよね?高校生だけど。失礼じゃない?
まさか、女子供に売るバルビローリはねえっ!!ってわけ?
が、店員は次の瞬間、レジの前に貼られていた紙ッペラを発見。どうも発売延期になったらしい。なあんだ・・・って。
あ、一切謝らないのか店員!!
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というような、読んでいる方にはまるで関係のない思い出話はおいとくとして。
この録音のいきさつを(三浦先生の貴重なる解説より)かいつまんでお話いたしますと。
1950年のある日、バルビローリがフェリアーに「愛と海の詩」の独唱者になってほしい、と彼女のマネージャーに交渉。でもフェリアーはバルビローリと仕事したいのは山々だけど、フランスものは歌ったことがないのでお断りする気持ちでいた。
しかし、フェリアーのピアノ伴奏者であるジョン・ニューマークが「ぜひ受けるべきだ」と共演をすすめた。彼は彼女にフランス語のコーチまでしてくれると言った。
ニューマークはフランス人の友人にショーソンのこの曲のテクストをゆっくり発音して録音してもらった。また、彼女はパリに行き、ピエール・ベルナックについてフランス語の歌唱指導をしてもらった。
そして1951年2月、アルバートホールで上演された。フェリアーの日記によるとコンサートは大成功。3月1日に再演されてその演奏は3月9日にBBC放送で流された。放送日にフェリアーはバルビローリ家にてサー・ジョンお手製ミートボールを食べたそうな。(←おいしそうだ)
その30年後、フェリアーの姉のウィニフレッドが亡き姉の放送録音を所蔵している人がいることを知り、照会の手紙を送った。所有者は快諾し、その録音を受け渡した。英デッカではレコードとして発売するために(復刻の作業のほかにも)数々の難問をクリアしなければならなかった。そして晴れて(実に演奏の32年後)レコードが発売されたのである。
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このレコードはこんないきさつがあって勿論とっても録音が悪い。シロウトの取っていた放送録音だからしかたないけれど なんでBBCに残ってなかったのぅー 終始ごおおおおという低音の雑音が聞こえる。
しかし、そんな中から聞こえるフェリアーの歌唱は、私がそれまで聴いたこともないくらい晴れやかなものである。にがてなフランス語にもかかわらず大好きな?バルビローリとの共演で心うきうきだったのかもしれん(勝手な想像)。
録音の悪いのも手伝って、なんだか天国から聞こえてくるような音楽である。(CD時代になってからも勿論購入したが、そんなに良くはなってないと思う)
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カップリングのサージェントとのブラームスもまた、泣けるいきさつが解説されている。(サージェントの愛娘がポリオにかかり、助かる見込みがないのを悲観した彼が、悲しみを紛らわすために本来ピアノ伴奏であるこの曲の管弦楽伴奏版を娘のベッドサイドで作っていた、という。)
というわけで、このレコードは色々な思いが重なって作られている、とても貴重な録音なのでありました。
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