プッチーニ:歌劇「トスカ」
指揮:ミケーレ・マリオッティ
演出:フランコ・ゼッフィレッリ
トスカ:ソニア・ヨンチェヴァ
カヴァラドッシ:ヴィットリオ・グリゴーロ
スカルピア:ロマン・ブルデンコ/その他
ローマ歌劇場管弦楽団・合唱団
NHK東京児童合唱団
(2023年9月17日 神奈川県民ホール)
コロナ禍を含めなくても、大規模な引越し公演を観るのは本当に久しぶり。
神奈川県民ホールは自分が生まれて初めてオペラを観た、そしてクライバー&ミラノ・スカラ座のボエームを観た思い出の地。そんな大昔はただただ外国の歌劇場は凄い!と驚嘆してただけだったけど、そのうち日本にもオペラハウスが出来たり、自分も海外旅行するようになりウィーンやロンドンの歌劇場にも通ったりしたから、目も耳も相当肥えてたつもりでいた。でも。
今回のトスカは全て世界レベル。見た目も可憐でグラマラスなヨンチェヴァのトスカは、声が(勿論生で聴いた事はないけど)マリア・カラスを思わせる深い声と表現で震えた。歌手の役は演じている上でも共感できるのかな。
グリゴーロは以前、ウィーン国立歌劇場のライブ・ストリーミングで「ウェルテル」を見た時に知った歌手で、とんでもなく素晴らしかったので「いつか生で見聞きしたいけど、叶うかな?」と思ってたのだが、叶って良かった。芸術家の役というより陽気なイタリア男という感じだが、(生で聴いた事は無いけど)パヴァロッティを思わせる美声、そして情熱的な演技に震えた。いやはやヨンチェヴァとグリゴーロはこの役では今やウチらが世界一じゃ!と自負しながら演じているのがひしひしと伝わってくる。
Wikipediaで読んだのだが、グリゴーロの舞台デビューはなんと13歳で「トスカ」の羊飼い役、しかもその時のカヴァラドッシ役はパヴァロッティだったとのこと。今回の公演では羊飼いは日本の男の子(末光朔大さん)だったが、見事な美声であった。また、NHKの児童合唱団が第1幕で出演していたが、とても可愛かった。
悪役のスカルピアをブルデンコが深い声で(邪悪でありながら決して下品にならずノーブルに)演じた。見せ場である第一幕の最後のテ・デウムも大迫力。
指揮者のマリオッティは盛り上げ上手で、あちこちにテンポを自在に動かすなど工夫を感じられた。ヒロインが悲劇的な最期を迎える場面では、ぐんぐんテンポを上げて「うわあっ」って叫びそうになるほどの迫力で(充分筋書き知ってるのに)、恐怖でブルブル震えた。怖いオペラだ、よく知ってるつもりなのに。カヴァラドッシが撃たれる場面も、銃声が凄くて自分の周りのお客さんがドン引きしたかも?と思うほどビクッとしてちょっと恥ずかしかった。
B席だったけど2階席の前から3列目で大変見やすく音もちょうど良かった。
観劇前にランチ。こんなゴージャスな公演なのに、そしてせっかくの横浜中華街なのに安飯(涙)。杏仁豆腐も付いて980円也。水餃子もチャーハンも大変美味しかったですが。慶福楼はワンコ連れOKで、近隣にフレンチブルドッグがいて癒された。
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普段から薄給だの貧乏だの嘆いているくせに、何でこんなに高価な公演に行くことになったかというと、実は会社の健康診断でひっかかってしまい、大したことないだろうけどちょっとした気まぐれで内視鏡検査を受けたところ、あらびっくりな感じで一泊入院したり手術したり。で、以前より不要な気がしてた医療保険が(2社も入ってた)どうも役立ちそうなので(まだお金はもらってないんだけど)、これ幸いと高価な券を買ったのである。というわけで皆様、いざという時のために医療保険には入ってね、内視鏡検査を受けてねと言いたい。あ、わたしは元気ですのでご心配なく。